こんにちは。
今回は以前ご紹介しました、砂漠の都会の罪人の本編を書いていきたいと思います。
情報量の多いヴィジョンのため、私の中でもいまだ整理できておらず、まとめきれていない部分があります。
読みにくいかもしれませんが、お茶のお供くらいに楽しんでいただけたら。
それではどうぞ。
砂漠の都会の魔術師たち
時代は現代風ではあるが、いまとはちがう不思議な場所。
品川みたいな大きな建物やビルがひしめき合うものの、裏路地に入れは中世ヨーロッパのような街並みが広がるなんともアンバランスさ。
街の外は砂漠で正しく『砂漠の都会』と呼ぶにふさわしい場所であった。リーダーは『成都』だと言っていた。
『私』は姿を変えてアイドルとして活動をしている。
理由は分からない。
ただ、この世界では『魔術が使えること自体は普通の事』であり多くの魔術使用者がいた。
ただ、『自らの力で魔術を使える人間』は少ないようで(基本は道具を媒介にする)、そのような人間は特に重宝された。
私はその一人で、そのアイドルグループは『魔術師集団』的な立ち位置らしい。
(全員無道具で魔術を使えていたのは確か)
とある事件。
『砂漠の都会』=『成都』にある大きなビルで起こった事件。
事の発端は知識に貪欲だったリーダーが古い魔術書の中にあった『毒魔術』を試したいという事だった。
毒と言っても、多少目に刺激がある程度のもので(催涙的な)失明や精神異常をきたすものではなかったし、ましてや殺傷能力のあるものではまったくない
材料もみた限りクエン酸とか重曹とか、体に悪いものでは一切なかった。
ただの好奇心からメンバー全員でその魔術を実行することとなった。
『成都』のビル内は魔法研究所のような場所で、魔法を使えるものならだれでも入ることができたし、割とオープンな環境だった。
(一般人も非公開エリア以外は入れる)
広い空間には沢山デスクが並べられ、その上には多くの魔術実験用の薬品や大釜が乱雑におかれている。
リーダーはその中から紫のような、緑のような。なんとも言えない色の液体が入った釜を探し出す。
これが魔法の根源となる重要な材料らしい。
その中に魔術書の記述に従いどんどん材料を入れていく。
全ての工程が終わると釜の中の液体は火にかけていないにも関わらずぐつぐつと煮え立っている。
次第に煙が立ち込める。
その煙が目に触れた瞬間少しの刺激を感じ、涙をぽろぽろ流し始める。
あー、これが書いてあった刺激かぁ~、確かに催涙効果だね。
なんてメンバーで笑いあいながら話していた。
途端、周りの研究者(魔術師?)が苦しみ始める。
煙はどんどん立ち込め、辺りは紫のような、緑のような煙景色に、そしてその煙の中から人の呻く声や途切れた声が前まなく響き渡る。
皆苦しみ藻掻きながらも『私』達をにらみつける。
『ああ、こいつらの仕業か』と。
それは憎悪に満ちた恐ろしい顔だった、蔑みの視線だった。
なにかがおかしい。止めなくては。
そう思ったときにはすでに手遅れで、メンバー以外の人間は屍の山と化していた。
そして連鎖反応が起きたのか、研究中の魔術が暴発する。ビルは高威力な魔術の暴発によって崩壊したのだ。
研究所は出入り自由とは言えど、だれがどんな魔法を使ったか、誰が出入りしたのかの記録は残る。
※ただ、自力で魔法が使える人間はセキュリティの書き換えができるので変化できる『私』含む4人は身バレ防止のため活動中の姿を登録していた。
リーダーが殺傷力の高い魔術を使ったと記録は残り、当時はグループ全員がこのビルに入館していたことは把握されていた。
直ぐに管理部はメンバー7人を指名手配し処刑を遂行することを『砂漠の都会』全体にアナウンスを入れる。
リーダーが試した魔術は催涙効果なんて生易しいものではない
――『非魔術師の命を刈り取る禁忌の魔術』だったのだ。
※非魔術師=道具の媒介なしに魔術を発動できない人間=一般人
その危険さが記されなかった理由は簡単で、開発者は魔術師で、その殺傷能力が自分に対して効かない故に危険視しなかったためだ。
私は飛行魔術と透過魔術を駆使して何とか追手を捲いた。
追手が来ないのを確認してから変化を解く。ビルを飛び出したのはお昼だったのに辺りは既に暗く、月が高く上った街並みだった。
ふと、正面を向くと一人こちらに歩いてくる。
――狐だ。
ボロボロになった狐は『私』を見つけると弱弱しい足取りで近づいてくる。
顔が認識できる距離になると、お互いがお互いの存在を確かめるように強く、強く抱きしめ合った。
自分たちは生きているのだと、確証が欲しかった。
二人とも言葉には出さなかったが、確かにそんな思いで、そして声なく泣いた。
会見と断罪
そのあと、リーダーと黄色とも無事合流、ほかのメンバーはあの場で火炙りとなったとニュースで聞く。
リーダーは自分のせいでこのような事態を引き起こしたのをとても悔やんでいた。
責任は取らなくては。
彼女はそういうが、あの様子では殺されてしまう。
メンバーの誰もがリーダーを止めたが、その願いを聞き届けてくれることはなかった。
そうしてリーダーは一人謝罪会見を開いた。
*他生き残りはテレビのようなものでその様子を見ていた
しかし、
[謝罪会見なんて軽いものでいいはずがない、殺人鬼が!]
会場では大ブーイングが起こり、抵抗をしないリーダーを取り押さえる。
そして彼女の前にはギロチンが設置されその首を刃の下に固定される。
「悪魔は死をもって地獄へ! 地獄へ落ちろ!! けがれた魂へ天罰を!!」
次の瞬間、彼女の首が跳ねとんだ。
テレビの向こう側で繰り広げられていたのはただの自己満足の殺人。
たとえ正義のためとは言え行き過ぎた正義感からその場の空気や人の心が壊れているのが見て取れる。
あそこにいる人間は誰も「人間じゃない、化け物」だ。そう思った。
人間なんて信用に値しない。
ただ、意図的ではなかったとはいえ、自分たちはそれをされても文句が言えない罪を犯していたのは、変えようがない事実だった。
それからしばらく3人で固まって行動をし、隠れ、できるだけ外出しないようにと心がけた。
黄色は当初から殺される運命にあるのではないかとおびえ、苦しみ、心が不安定な状態であることが多かった。
そして、リーダーの死を目の当たりにしてからは狂ってしまった。
黄色の奇行
突然彼女は隠れ家で発狂する。
笑い転げ、狂い、苦しみ藻掻き、許してくれと泣きじゃくる。
彼女を落ち着かせようと『私』と狐は手を尽くすものの常人じゃない力で黄色は跳ね除け、当時着ていた衣装を身にまとって外へ飛び出していった。
あのままでは黄色も殺されてしまう
そう思って一緒に家を飛び出そうとした『私』を狐は止める。
あいつはもうだめだ、自由にさせてあげよう。
そういって狐は私が彼女の後を追いかけるのを制し、傍観することを決め込んだ。
ただ、責任として最期を見届けるべきだ。
そういって狐と二人透過魔法を使って黄色の様子を追いかける。
透明状態なので成都の中とはいえど人に知覚されることはい。
*グループ内では知覚できるように設定されている魔法のようだった。
町の中心部にある広場で黄色を見つける。
突然彼女は透過魔法を解き叫び始めた。
私は魔女だ!皆を殺した悪魔だ!
お前たちが忌み嫌う悪魔はここにいる!!
突如狂ったように叫び散らかす黄色に町の人たちは憎悪の視線を向ける。
あいつだ!魔女の一人が出てきた、ついに頭がいかれたのか。
殺せ!殺せ!! 根絶やしにしろ、髪一本もこの地に残すな!!
狂ったように笑う黄色を大勢で囲い込み彼女の体を覆い隠す。
彼女のすべてが覆いつくされそうになった時、こちらに気づいた黄色は、ひどく優しい笑顔をこちらに向けて、そして飲まれていった。
しばらくして人々がいなくなったその場に残されたのは、原形をとどめておらず、赤黒い血に覆われたただの肉塊だった。
あの場を見てからというものの、『私』と狐の心も蝕まれ、発狂するのも時間の問題だった。
狐は日がたつにつれてどんどん弱っていくし、綺麗な赤髪も白くなっていく。
どうやら魔法が解けている様子だ。
彼は美しい白狐で妖の一族であり人間ではなかった(とはいえ人型ではある)。狐の精神が弱ってしまい魔法が維持できなくなっているようだった。
そんな彼は『もう野蛮な人間といるのはこりごりだ』そう言って『砂漠の都会』を去ることを決める。
『私』も連れて行ってほしい。いつ殺されるかわからない、怖い。
そう告白するものの、狐は笑って
『君のことは好ましいけれど、人間だから連れて行けない。妖の領域で人間は生きていけないから。 でも心配しないで、大丈夫だから』
そう言って狐は夜のうちに『砂漠の都会』から去っていった。
ただ一人、私はこの『砂漠の都会』で生きていくことを強要されたのだった。
(つづく